Nothing Else #2

 人生ってなんだろうな。そう考えたことはあるだろうか? いつに間にか生まれてきて、なにを残すわけでもなく死んでいく。

 なんのために生まれて、なにをして生きるのか、すごく大切なことのはずなのに、その答えを知らぬまま、殆どの人は死んでいく。

「生まれたからにはやるだけやって死ぬだけだ」なんて吹っ切れた考えに至れれば楽なんだろうけど、なかなかそうもいかないわけでさ。

「ぼくがなにを持って生まれたのか」「俺はなにをする為に生まれたのか」「わたしはなにを遺すために生まれたのか」いつもいつもそうなんだけどさ、考えたってどうしようもないことばかり考えてしまうんだよな。

 ぼくは今の人生に満足していない。かといって不満かと言われれば、別にそうでもないんだよな。ただ、“大事な何か”が欠けている気がするんだ。それは使命ってやつかもしれないし、意味ってやつかもしれない。生きていくための核、根っことでも言おうか。そういうようなものが足りない気がするんだ。

 でもそれはただの我儘なだけの気もするんだ。思い描いた理想から乖離した現状を受け入れて、どこかで折り合いをつけて生きてる自分に対して、無意識に『違う、そうじゃない。こんなはずじゃなかったんだ』って叫んでいて、それが“抜け落ちた大事ななにか”を錯覚させているのかもしれない。

 きみはどうだい? 自分の人生に満足しているかい? これは紛れもない、わたしだけの人生で、わたしにしかできないことなんだ。なんて、口に出してみて違和感を感じないか?  感じないならきみはそのままその道を突き進めばいいし、違和感を覚えたならぼくと同じ病を患ってしまっていることだろう。

 こんなこと言ったら誰かに怒られそうだけど、 実際、自分の人生に満足してる奴らなんてごく少数派だろう。「こんなはずじゃなかった」とは行かないまでも、「あれをやっておくべきだった」「もっとああすればよかった」って後悔しながら永遠の眠りにつく人のほうが多いんじゃないかな。

 大団円の大往生でエンドロールに入れるならそれが最高なんだろうけど、分岐条件が何一つわかっていないし、やり直しもきかないこのゲームでトゥルーエンドに辿り着くのは難しい。どれだけ努力を重ねて望むものを全て手に入れたとして、どっかで「本当に欲しいのはこんなものじゃなかった」なんて考えてしまったらもうそこまでだ。

 きっと、遅かれ早かれ、ぼくらは後悔することになるんだろう。というか、既に後悔を重ねて今ぼくらはここに立っている。つまり、その積み重ねでぼくらは今生きているんだ。後悔なくして今のぼくらは存在し得ない、ってことだな。それらは無駄なことではなかったんだよ、きっとさ。

 大体ああだのこうだのいって後悔して、あり得たかもしれない正解を選んだ先の人生を想像したってさ、それがそのとき正解だったか、なんてわからないだろ? このゲームに攻略本はないんだ。だから分岐点での正しい選択、なんてわからないんだ。それに分岐点は一個だけってわけじゃないからね。きみの過去にあった分岐点、その全てで正解し続けるなんて、恐らくとんでもない難易度だ。仮にそれが叶ったとしても、それ、全くの別人じゃないか?

 つまりさ、今まで生きてきて間違えたことなんて数えきれないほどあるけど、その間違いがあったからこそ今ぼくらはここにいるんだ。だから過去の自分のした選択を咎めたり、あり得たかもしれない自分を想像して悩むのも程々にしよう。

 なんだかんだここまで生きてきたんだから、この先も暫く生き続けるんだ。その過程で間違いなんてたくさん犯すさ。でもその間違いを経た先にいるのがぼくらなんだ。ただ、今際の際に「生まれてきたことを後悔している」なんて悲しいことは言いたくないな。その為にどうすればいいかって?  これから考えるんだ。たくさんの後悔を重ねてね。

 考えたってどうしようもないことをひたすらに引き延ばして、ノンストップの一筆書きで綴るのが“これ”の決め事なので、特に結論もオチもないんだ。というか、思いつかなかった。

1700文字/35分